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【読書感想文】学校へ行かなかった私が「あの花」「ここさけ」を書くまで

学校の図書館で借りた本『学校へ行かなかった私が「あの花」「ここさけ」を書くまで』(岡田麿里・著)の読書感想文です。(ネタバレ注意?)

どんな本?

今回読んだ本はこちらです。

「あの日みた花の名前を僕達はまだ知らない。」「心が叫びたがってるんだ。」ひきこもりだったじんたんと、幼少期のトラウマで声が出なくなった成瀬順。二人を主人公にした二本のアニメは、日本中の心を揺さぶり、舞台となった秩父は全国からファンが訪れるアニメの聖地となった。実は、そのアニメの脚本を書いた岡田麿里自身が小学校で学校に行けなくなっていたのです。これは、母親と二人きりの長い長い時間をすごし、そして「お話」に出会い、やがて秩父から「外の世界」に出て行った岡田の初めての自伝。

感想

まず、最初に言っておかなければなりません。 自分は、「あの花」も「ここさけ」も見ていません。 正確に言うと、「あの花」は2、3話見て、その後、いきなり劇場版を見てしまいました。(あの頃はアニメに疎く、「劇場版」がなんなのか理解していませんでした。)だから、「あの花」の内容は殆どよく分かっていません。言うなれば、「あの日見たアニメの内容を僕達はまだ知らない。」のです。
さて、こんな状態で、この本を読むべきだったでしょうか。いや、そんなわけないですね、完全に順番を間違えました。しかし、この本を読んだことで、「あの花」「ここさけ」が見たくなりました。

読んでみて分かったが、「あの花」「ここさけ」を見てない人でもぜんぜんこの本は読めます。 作品のネタバレになることはあまり書かれていません。それに、知らないと意味がさっぱり分からない、なんてこともないです。その理由は、本の大部分は、岡田さんの不登校時代と、そのときの彼女の心境が語られているからです。岡田さんの生い立ちとかを詳しく知りたい人が読むべきな感じでした。逆に、「あの花」「ここさけ」のエピソードを知りたい、という人はあまりおすすめしないです。

なぜ不登校になったか?――それは、ほんの些細なことで、不登校になってしまったのです。友達の陽子に憧れて、陽子のように明るく振る舞っていた時期がありました。しかし、それから半年後の、厳しい残暑の日に、いつものように友達にちょっかいを出されたときに耐えられなくてつい「痛いからやめて」と低い太い声が出してしまいました。そのときにちょっかいを出した友達に「いつものマロリ*1らしくない」と言われました。

その瞬間に、はたと思った。
「いつもの私って、なんだ?」

そこから、本当の自分ってなんだ?となり、人間関係がおかしくなって、不登校になってしまったという感じです。 自分自身は不登校になったことがないので、不登校になってしまうのか理解していない部分もたくさんあります。どのようにして不登校になってしまうのか。その過程をこの本で知った気がします。

「自分をどんなに変えようとしても、自分は結局、自分なんだ」という感じがしました。

(学校に行けなくなった私は、)基本は食うか寝るか本を読むかゲームをするかテレビを見るかトイレに行くかを繰り返した。 ……(中略)…… そして、毎日毎日。飽きずに同じことをくりかえし考えていた。

不登校しているときの生活は普通に興味があったので、参考になりました。変化のない毎日、日常という感じのようです。

志賀直哉の「暗夜行路」を読んでいて「消日」という言葉を見つけた。 この文字を目にしたときの、私の驚きといったらなかった。私の現状に、あまりにぴったりな言葉。これこれ、これなんだと。何も積み重ねず、生産性もなく、思い出に残ることもなく、ただぐずぐずと消滅するだけの日々。

読んでいて、結構、ガッツリ不登校をしているので、これでこの後、「あの花」と「ここさけ」の脚本を書くんだ……と思うと、人生本当に何が起こるか分からない、と思いました。

妙な閉塞感、外の世界との壁、困難な自意識との闘い。 重苦しい話でありつつも、たまにユーモアのある心豊かな岡田さんのエッセイでした。だから、最後まで読み続けられました。読んで、良かったと思います。

テレビ放送

学校へ行けなかった私が「あの花」「ここさけ」を書くまで、がNHK2月11日(月曜日)午前0時40分~ 午前2時10分に放送予定です!
多分、自分は録画すると思います。興味があるなら、チェックしておきましょう!! www4.nhk.or.jp

書籍情報

題名 学校へ行けなかった私が「あの花」「ここさけ」を書くまで
著者 岡田麿里
出版社 株式会社文藝春秋
出版日 2017年4月15日
ISBN-13 978-4163906324

*1:「マロリ」は、当時の岡田さんのあだなです。